自分が理想とする演奏と、現実の自分の演奏とのギャップに悩まされ、「音楽」が「音が苦」になってしまう。
長くピアノをやってこられた方であれば、一度や二度はご経験があるのではないかと思います。
何事もそうですが、初めから上手にできる人というのは、そうはいないのではないでしょうか。
稀に初めから上手にこなすことができる、うらやましい限りの人がいますが、このようなタイプの人が、天才と呼ばれるのではないかと思います。
しかし、様々な天才と呼ばれる人々の、天才と呼ばれるに至るまでのストーリーの中で、幼少期から才能を発揮し、なおかつ、一度も困難や挫折に遭遇することがなかったというストーリがあるでしょうか。
皆、何かしらの困難や挫折に遭遇し、それを乗り越えて天才という賞賛を得たからこそ、私達は天才達のストーリーに感動し、尊敬の念を抱くのではないでしょうか。
「音楽」が「音が苦」になってしまう原因の一つは、早期に結果を求めすぎる点にあるのではないかと思います。
今日では、あらゆるものが「迅速に」「できるだけ少ない手間で」行うことが可能になってしまったために、私達はそれが難しい分野にすら求めてしまいがちです。
しかし、どんなに「迅速に」「できるだけ少ない手間で」行おうとしても、それが難しいものは、まだまだたくさんあると思います。
例えば、花について考えて見ます。
花屋さんに行けば、すでに咲きかけの花、咲いている花などを簡単に手にいれることができます。
しかし、その花は初めから咲きかけだったのでしょうか、咲いていたのでしょうか。
花が咲くまでには、種を蒔き、芽が出て、茎が伸び、葉が茂り、つぼみができるというプロセスがあります。
つぼみが開いて、ようやく花が咲くわけです。
成長促進剤などを使って、このプロセスを短縮化することができたとしても、種を蒔いたら、すぐに花が咲くというわけにはいきません。
むしろ、時間と手間をかけただけ、より美しいものとなり、愛着もわくのではないでしょうか。
食品など、スピードアップと効率化を図った結果、食品添加物などの問題が発生したことからもわかるとおり、自然に逆らえば、必ずしっぺがえしを受けます。
私は、ピアノ演奏も同様ではないかと思うのです。
一流のピアニストの演奏は、それだけの時間と手間がかかっているからこそ一流と呼ばれるのであって、それを同様の時間と手間をかけずに同じように演奏しようとしても、難しいのではないでしょうか。
一流のピアニストの演奏を目標とすること、「あんな風に弾けたらどんなに素晴らしいだろう」という想いは、練習のモチベーションを保持する上で大変効果的でしょう。
しかし、この目標が原因で「音楽」が「音が苦」になってしまうのであれば、本末転倒になってしまいます。
スポーツでは、その競技で最大限のパフォーマンスを得られるように、トレーニングによって人間の体を調整していきます。
私は、ピアノも同じではないかと思います。
ピアノという楽器を思い通りに操ることができるように、私達の手や体を調整していく。
それが練習ではないでしょうか。
知識は、どれだけでも効率よく、高速に吸収することが可能ですが、人間の体は、そう簡単には変化しません。
練習の効率化を図るために様々なトレーニング器具等が開発されていますが、これらの器具でさえ、使い方を覚え、その後、その器具を使ってトレーニングをし続けて初めて、効果を実感することが可能です。
早期に結果を求めるのではなく、花の成長過程を楽しむように、ご自分のピアノ演奏の成長過程を楽しみながら、目標に到達するまでの道をご自分のペースで歩んでいかれることが、「音楽」を「音が苦」にしないコツなのではないかと思います。
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