ピアノで基本と言うと、とかく筆頭に上げられるのがハノンですが、それではハノンを弾けば、本当に基本が身に付くのでしょうか?
残念ながら、答えはNOです。
ですから、一所懸命にハノンを弾いているのに、基本がさっぱり身に付かないと嘆いていらっしゃる方も、ご心配ありません。
あなたが悪いわけではないのです。
もともと、弾くだけで基本が身に付くような、そんな魔法のような仕掛けはハノンにはありません。
これはハノンだけではなくチェルニーや、その他の教則本・練習曲についても言えることです。
では、なぜこれらを弾くだけでは基本が身に付かないのか?
この質問に答える前に、そもそも基本とは何かということについて、考えてみたいと思います。
広辞苑によれば、
とあります。
ですから、ピアノの基本と言った場合には、ピアノ演奏が成り立つような根本ということになります。
全音楽譜出版社より出版されている『全訳ハノンピアノ教本(平尾妙子訳註)』の『はじめに』の部分に、
"ピアノの名手になる60練習曲"という1巻を作りました。
という一文があります。
『はじめに』に書かれていることをまとめますと、ピアノの技術的問題をいかに効率よく、また興味を失うことなくクリアーするかという視点からまとめられた練習曲集がハノンということになります。
ということは、ハノンにピアノの基本があるわけではなく、ハノンはピアノ演奏が成り立つような根本を身につけた人が、それをさらに発展させるための教材ということになるのではないでしょうか。
ですから、ピアノの基本を身につけようと考えるのであれば、いきなりハノンから始めるのではなく、手のフォームや指の動かし方などといった、ピアノを弾くという動作の根本を身につけることが必要になります。
テニスに例えるならば、ラケットの持ち方、コートに対する体の位置などといった事柄に相応するものです。
ラケットの素振りをたくさんやれば良いとは言っても、ラケットの持ち方そのものに問題があった場合、その練習は果たして効果を発揮するでしょうか。
ピアノの場合も同様で、手のフォームや指の動かし方といったピアノを弾くという動作の根本に問題があったとしたら、どんなにハノンを一所懸命に練習したとしても効果は上がりません。
ピアノの基本を身につけようと考えるのであれば、ハノンや他の練習曲を始める前に、まずは、ピアノを弾くという動作の根本が身についているのかどうかを確認する必要があると思います。
私は指ができていないということを長い間指摘され、ハノンやピッシュナ、その他様々なメトードを試しましたが、どんなに練習をしても問題が解決されることはありませんでした。
学生時代など、毎朝2時間かけてハノンを練習したりもしましたが、効果が上がっているという実感は全くありませんでした。
いよいよピアノを諦めるべき時かと思いかけた頃、私の場合、手のフォームや指の動かし方といった基本的な動作に大きな問題があることを発見し、そこから、かつては何時間練習しても解決しなかった問題に、少しずつ光明が灯りはじめました。
学生時代は音階もろくに弾けず、音大大学院(しかもピアノ専攻)に通いながら幻想即興曲も満足に演奏できないことに対して極度のコンプレックスを持っていましたが、大学院修了後、楽器店でピアノを教えながら空き時間に試行錯誤を繰り返しながらテクニックの矯正を行った結果、ようやく幻想即興曲を人前で演奏することができるレベルまで到達しました。
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